七つの贈り物

 

 矢車草

 

 始まりは彼女だった。

 

 誰かが頭を撫でる感覚に、アーサーの意識はふわりと浮上する。重い瞼を開くと、灰青色のぼんやりとした光に照らされた女性の姿が見えた。幾度か瞬きをして焦点を合わせると、それがマーリンであるとわかる。

「マー、リン?」

「おはよう、アーサー」

 寝起きの掠れた声で名を呼べば、ベッドの上に腰掛けた彼女は優しく笑む。その言葉と、部屋を包む光に、今が朝と呼べる時間帯であることを知った。柔らかなベッドに沈んでいたい思いを振り切って、ゆっくりと上半身を起こす。一度頭を振って、眠気を払ってから言った。

「おはよう。……どうかしたの?」

「何も問題はない」

 そう言って、マーリンは手を伸ばし、少し寝癖のついたアーサーの髪を後ろに撫で付ける。優しい手に自然と目を細めれば、彼女が可笑しそうに笑った。

「なに?」

 声にほんの少しの不満を乗せると、彼女が目を細める。そうして、右手をアーサーの胸元に当てると、次の瞬間、そこに一輪の花が現れた。まるで今手折って来たかのように瑞々しく可憐だ。

「アーサー。お前にこれを」

「花……?」

 白いマーリンの手からそれを受け取って首を傾げる。

「何の花?」

「名は重要ではない。この花はお前の為に咲いて、枯れるだろう。手元に置いてやってくれるか」

 花を持つ手を、彼女の両手が優しく包む。静かな声が告げた言葉に、幾度か瞬いた。

「……うん、いいけど。私がもっているより、マーリンが持っていた方が似合うよ?」

「おや、我が王にそのような口説き文句を教えたのは誰かな」

「くど……、もう! 思ったことを言っただけなのに!」

 膨れてそっぽを向くと、マーリンの手が頬に触れ、あやすように撫でられる。くすぐったくて彼女の手を掴んで止めた。「くすぐったいよ」と主張すると、綺麗な笑みが返ってくる。

「アーサー。お前に、ささやかな幸福を贈ろう」

 そう言って、魔法使いはそっと上半身を伸ばすと、アーサーの額に唇で触れた。軽いリップ音を残して離れる。彼女はそのまま立ち上がると、優しげに細めた瞳で見下ろす。

「顔を洗ってから出てくるように」

 その言葉を残して、マーリンは軽く手を振り部屋から出て行った。

 残されたアーサーは、その意味を上手く理解出来ずに「顔?」と呟く。ベッドから抜け出して部屋にある姿見を見て合点が行った。

 額には、赤い紅の後が残っていたからだ。

「もう……なんなのさ」

 額へのキスだなんて、子ども扱いもいい所だと思う。なんとなく気恥ずかしくなって、アーサーは額を押さえた。頬はほんのりと熱い。それをなんとなく心地よく感じて、少し笑った。

 

 鷺草

 

顔を洗い部屋を出ると、朝の鍛錬を行う為に鍛錬場へと足を向けた。その途中、中庭に面した廊下を通る。朝の光に輝く中庭に視線を向けると、鮮やかな紫の髪をした青年の後ろ姿が見えた。

「おはようございます! ゴウセル殿」

 その背に声を掛けると、彼が振り向く。朝日の中でも遜色無い美貌の持ち主が、その表情を変えること無く片手を上げた。

「おはよう、アーサー」

「朝の散策ですか?」

「そんなところだ」

 答えて、彼がこちらの方へ歩み寄ってくる。その手には、一輪の花があった。ゴウセルに花一輪。決して似合わない訳ではない、むしろとても似合っているが、だからこそ不思議に思って聞いた。

「何の花をお持ちなんですか?」

「これか」

 目の前で立ち止まった彼は、手元にある花に視線を落とす。それからその花をアーサーへと差し出した。

「気に入ったのなら、お前にやろう」

「ああ、いえ。気に入ったと言うか、気になったというだけです」

 遠慮するように両手を胸の前で振ると、ゴウセルはゆっくりとした調子で首を傾げた。

「遠慮することは無い」

「あの、でも」

「さあ」

「……はい。頂きます」

 花を胸元に押し付けられての言葉に、ついには押し負けた。彼の手から花を受け取って、しげしげと見る。それは、先程マーリンから貰った花によく似ていた。

「お前の国は小さいがいい国だな。人々の顔が明るい。書物も沢山ある」

「えっ、あ。はい! ありがとうございます」

 唐突に褒められて、照れたように後ろ頭を掻いて礼を言う。そんなアーサーを見て、ゴウセルは無表情のまま続けた。

「そうだな。では俺は、お前の国が健やかに発展することを願おう」

「へ?」

「不思議そうな顔をしているな。不満か」

 不満かと問われてぶんぶんと首を振った。この国の発展を願ってくれる気持ちに不服などある訳が無いからだ。

「いえ! そんなことは」

「ならいい。話はそれだけだ、また後で会おう」

 一方的に告げると、ぽんっと軽くアーサーの肩を叩いて、ゴウセルは城内へと消えていった。その背が見えなくなるまで見送って、手元に視線を落とす。そこには、貰った花一輪が風に揺れていた。

 

 ハイビスカス

 

「お疲れさまです!」

 朝の鍛錬を終えたアーサーに、鈴の音のような声が掛かった。振り向くと、鍛錬場の入り口を入った辺りに、可憐な美少女がにこやかな笑みを浮かべて立っている。リオネス王国第三王女、エリザベスだ。

「エリザベス殿。どうしてこのような所に?」

「はい。アーサー様がここにいらっしゃると聞いて。……どうぞ、使って下さい」

 そう言って柔らかな布を差し出してくる少女に、礼を言って受け取り、滲む汗を拭った。すると、次には水筒が差し出される。

「ああ、何から何まで、ありがとうございます」

「いいえ、どういたしまして」

 水筒を受け取り、喉を潤す。乾いた体に水分が染み渡っていった。水筒に入っていた水の殆どを飲み干すと、一息つく。そうして、エリザベスが自分を探していたということに気付いた。

「探させてしまったようで、すみません。私に何かご用でしたか?」

「はい。アーサー様に、お渡ししたいものがありまして」

 アーサーからほとんど空になった水筒を受け取った彼女が、左手に持った籠の中に水筒を戻す。その手で、籠に挿されていた一輪の花を摘んだ。

「これを」

「……花」

「はい、受け取って頂けますか?」

 にこりと笑む少女に、否とは言えず、花を受け取る。それは、マーリンやゴウセルから貰った花と同じように見えた。エリザベスは胸の前で両手を合わせると、嬉しそうに「お似合いです」と言った。花が似合うと言われて、喜んでいいのか悲しんでいいのかわからなかったが、褒められたのだろうと思って「ありがとうございます」と告げる。すると彼女は、優しげに眦を下げた。

「私からは、この先も輝く勇敢さを贈ります」

「え?」

「アーサー様が、困難に立ち止まった時、己の中にこの光を見出せますように」

 そう言って、エリザベスは強い意思の籠った瞳でアーサーを見た。その視線に押されて、瞬きをする。そんな様子を見て、彼女は照れたように笑った。

「それでは。また後でお会いしましょう」

 一礼を残して、彼女が背を向ける。そのまま小走りに立ち去っていく少女を、呆然としたまま見送った。

 日の光の中で、綺麗な銀の髪が揺れていた。

 

 エリカ

 

 朝食を取った後、午前の執務をこなす為に執務室に籠った。

 淡々と書類を確認し、サインし、押印する。一つ一つの作業を丁寧かつ迅速に行うことに集中していると、すぐ近くでコンコンと何かを叩く音が聞こえた。それに意識を引き戻されて顔を上げると、執務机の前に背の高い青年が立っている。

「バン殿」

「よお。随分集中してたみてーだな」

 いつの間にやって来たのだろう。バンはアーサーを見下ろして笑うと、チェック済みの書類の山に手を伸ばした。一番上にある書類を摘んで、さして興味も無さそうに見る。

「気付かなくてすみません。何時からいらしたのですか?」

「いや、ついさっき。一応ノックはしたぜ」

 そう答えて、彼は書類を元の場所に戻した。

「なあ。これ、全部お前がやってんの?」

「はい? ……そうですね。他に任せるわけにもいけませんから」

「王様ってのは大変だな」

「事前に整理してくれる者が居ますから、そうでもありませんよ」

 にこりと笑って答えると、バンは一度瞬きをした。そして「あー」と声を出す。ほんの一瞬、遠い何かを見るような目をした。その目に宿る優しい光を、温かいと感じる。

「そうだな……」

 呟いて、彼はおもむろに片手を伸ばして来た。その手はアーサーの頭に触れ、軽く叩かれる。

「お前に孤独に耐えうる力を贈ろう」

 真っ直ぐに見つめてくる鮮やかな赤い瞳に、思わず小さく頷く。すると、彼は満足そうな笑顔を浮かべた。それはどこか幼さを感じさせるものだ。

「よーし、いい子だ♪」

 そう言ってアーサーの髪を乱すバンに、されるがままになりつつも問うた。

「えっと、ありがとうございます。あの、一つお伺いしても良いでしょうか?」

「なんだぁ?」

「今日は何があるのですか?」

 その言葉に、バンは一瞬固まった。それから「何かあるって、何が?」と逆に問うてくる。だが、問われてもアーサーに分かる筈も無い。分からないから聞いているのだ。

「まあ、あんま難しく考えんな。くれるもんは貰っとけばいいんだよ」

 彼の手が、最後に頭を叩いて遠ざかっていく。

「ん。じゃあ、また後でな」

 そう言って、あっさりとバンは背を向けた。ひらひらと片手を振って執務室の外に出て行く。その背が見えなくなるまで見送って、アーサーは机の上に視線を戻した。そして、あ、と思う。

 今朝、ゴウセルとエリザベスから貰って花瓶に挿した花。そこに、いつの間にか一本、花が増えていたのだ。机上を彩る三本の花に、小さく息を吐く。そして、優しい気持ちで笑った。

 

 グラジオラス

 

 昼下がり。窓から差し込む暖かな陽光に、ふわりと欠伸をした。どうにもこの時間は眠い。手に持ったペンをペン立てに戻して、アーサーは背伸びをした。少し休憩にしよう。そう思って立ち上がると、執務室の外に出る。廊下を歩いて階段を下り、日差しの溢れる中庭に出た。咲き誇る夏の花を眺めながら歩いていると、上空から声が掛かる。

「やあ、アーサー」

 その声に振り返り上を見上げると、眩しい光の中に大きな四角い影が見えた。その影はふわりとアーサーの目線の高さまで降りてくる。そこで、ようやくそれが、大きなクッションに乗ったキングであることが分かった。彼は眠そうに欠伸をする。

「いい天気だね」

「そうですね」

「執務は終わったの?」

「ほんの少し休憩に」

「そう。いいんじゃない」

 キングはさして興味も無さそうに言う。本当に興味が無いのだろう。アーサーは彼を見て首を傾げると、問うた。

「キング殿も、何か?」

「まあ、流石に気付くよね」

 うつ伏せに寝転んだまま、キングが片手を上げて振る。すると、そこに一輪の花が現れた。今日一日で、すでに見慣れてしまったその花を見て、困り顔で笑う。

「朝から四回も似たような事が続いていますから」

「迷惑かい?」

「そんなことは。むしろ、嬉しいです」

 その言葉は本心だった。一日の内にこんなにも沢山の祝福を受けたのは初めての事だ。それが、憧れの七つの大罪団員であったり、リオネスの姫君であったりするのだから、嬉しくない訳が無い。

「そりゃ良かった。じゃ、受け取って」

「はい。ありがとうございます」

 差し出された花を大事に受け取ると、アーサーは笑った。その笑顔を見て、キングも薄く笑う。

「オイラから、キミへ。たゆまぬ努力を贈ろう。常々これを忘れないように」

「……しかと、受け取りました」

 神妙に頷くと、彼がふわりと欠伸をした。

「ああ、ホントいい天気。オイラはこのまま昼寝するよ。また後でね」

 そう言って、キングはふわりと上空へ浮かび上がる。それを見送って、アーサーは空を見上げた。

 薄く青い空には、雲一つ見当たらなかった。

 

 日日草

 

「やっほー、アーサー!」

 元気のよい声と共に執務室の扉を開けたのは、マーリン特製ミニマム・タブレットで人間サイズになったディアンヌだ。

「ディアンヌ殿。……その格好は?」

「えへへ。メイドさんに服借りちゃったよ」

 片手で、胸下からふんわりと広がる長いスカートを持ち上げてみせる彼女に、にこやかな笑みを浮かべ「よくお似合いですよ」と褒めた。するとディアンヌはツインテールの一房を口元に寄せて照れ笑いを浮かべる。オーソドックスなメイド服は、実際彼女によく似合っていた。

「ありがとう、アーサー」

「いいえ。本当のことですから」

 お互い笑顔を交わした所で、ディアンヌが片手にトレイを持っている事に気付いた。不思議に思って見ると、それに気付いた彼女が、入り口近くにあるローテーブルの上にトレイを置く。

「厨房の人に頼んで、おやつ作って貰ったんだ。一緒に食べようよ」

「それは、ありがとうございます」

 礼を告げて立ち上がると、茶器の準備をするディアンヌの元へ歩いていった。勧められるがままソファに座ると、目の前にカップと皿が置かれる。皿の上には焼き菓子あり、香ばしい香りが鼻をくすぐった。

「美味しそうですね」

「だよね~。はい、準備完了。食べよ?」

「はい。頂きます」

 彼女が淹れてくれたお茶を一口飲んでから、焼き菓子に手を伸ばす。さくりと齧って、ほんのり甘いそれを楽しんだ。

「ん~、美味しい」

 アーサーの隣で、ディアンヌも焼き菓子を口に運んでいる。そうやって、二人は何気ない話をしながらお茶の時間を満喫した。

 皿の上の焼き菓子がほとんど無くなった頃、隣に座った少女が「あ!」と声を上げる。

「いけない。本来の目的を忘れちゃうとこだったよ。はい、アーサー」

 彼女はトレイの上に置かれた一輪の花を摘むと、にこりと笑顔でアーサーに差し出した。それを受け取って「ありがとうございます」と笑う。

「何も聞かないの?」

「聞いても良いのですか?」

 聞き返すと、ディアンヌはぶんぶんと首を振った。それを見て「なら、聞きません」と笑顔で答える。それを見て、彼女は優しく笑った。

「ボクからアーサーへの贈り物は何が良いかなって、ずっと考えてたんだけど、やっぱりこれかなあ」

「なんでしょう」

「キミに、変わらぬ友情を」

 言われて、アーサーは瞬きをした。ディアンヌから友情を示された事を一瞬理解出来なかったのだ。

「ダメかな?」

「っいえ! あの、嬉しいです、とても!」

 彼女に不安そうな顔をさせてしまった。焦りながら返答をすると、少女はぱっと破顔する。

「良かった! これからもよろしくね、アーサー」

「はい。よろしくお願いします」

 にっこりと笑顔を向けてくるディアンヌに笑みを返すと、彼女はすっと立ち上がる。空になったカップと皿をトレイの上に乗せると、片手で持ち上げた。

「じゃあ、ボクは行くね。アーサー、また後で」

 そう言って少女は片手を振って部屋から出て行く。賑やかな来訪者の去った部屋は、妙に静まり返って寂しく感じた。

 

 駒繋ぎ

 

 終わりは、彼だった。

 

 夕暮れ時、鮮やかな橙に染まる世界を、中庭にある四阿のベンチに座ってただ眺めていた。青い空は夕日の色と混ざり合い、濃い紫にも見える。それをぼんやりと眺める時間を、とても幸せだと思った。

 今日は本当に素敵な一日だ。このまま終わってしまうのが酷く寂しいと感じるくらいに。

「メリオダス殿で、最後でしょうか?」

 近付く気配に、空を眺めたまま聞いた。

「ああ、最後だ」

 落ち着いた声に、ゆっくりと声のした方を向く。アーサーの隣に、彼は腰を下ろした。その手には、一輪の花がある。

「それは、寂しいですね」

「いつだって終わりは来るもんだ。楽しい時間も、悲しい時間も、何時かは終わる。そうだろ?」

「ええ」

 その言葉に、ふっと口元に笑みを浮かべる。メリオダスは、手に持った花を暫く弄ぶ。何も言わずにそれを見ていると、彼がアーサーの目を見上げて笑った。

「手を出せ」

 言われるまま、片手を差し出す。その掌の上に、一輪の花が置かれた。

「お前の希望を、叶えよう」

 メリオダスの言葉は予想外のもので、驚きに瞬いた。

「希望?」

「ああ、なんでもいいぜ」

 聞き間違いかと思い問い返すと、肯定の言葉が返る。希望を叶える。何の制限も無いそれは、とても魅力的な言葉だ。無意識に小さく息を飲む。

「なん、でも?」

「オレに出来る範囲でな」

「……」

 メリオダスの瞳に嘘は無い。彼が出来る事ならば、なんでも叶えてくれるのだろう。思案しながら、視線を手元にある花に移す。七本目のその花は、夕日に染まって儚げで美しい。マーリンは言っていた。この花はアーサーの為に咲き、枯れると。それぞれの祝福と共に贈られた花。この贈り物が自分の為であるならば、願いは一つだ。

「メリオダス殿」

「ん」

「半ば忘れていたのですが、今日は私の誕生日らしいのです」

「忘れてたのか」

 瞬きをする大きな瞳を見ながら、照れ笑いをした。

「ですから、その、お祝いをして頂けたら、嬉しいです」

「……祝ってるつもりなんだけどな」

「はい。沢山の祝福を頂きました。けれど、誰からもその言葉は聞かなかったのです」

 照れ隠しに後ろ頭を掻いて視線を彷徨わせると、メリオダスが笑う気配がした。

「そんなことでいいのか?」

「そんなことなんて言わないでください」

 少し不貞腐れるように頬を膨らませると、彼は立ち上がってアーサーの頭を撫でた。あやすような手つきが心地よくて笑う。

「アーサー」

 呼ぶ声に視線を向けると、すぐ傍で優しい笑みを浮かべるメリオダスの姿。

「誕生日、おめでとう」

 穏やかな声で告げられた言葉に、破顔した。

「はい、ありがとうございます!」

「……ほんとにこれでいいのか?」

「ええ、構いません。これ以上を望むのは過分なことです」

 はっきりと言い切ったアーサーに、メリオダスはふっと息を吐く。

「わかった。所で今言った言葉だが、出来れば聞かなかった事にして欲しい」

「何故ですか?」

「祝いの言葉は皆揃って言おうって事になってたんだよ」

 少しバツの悪そうな顔をして答える彼に、アーサーは首を傾げる。皆揃ってとはどういうことだろう。そう考えていると、メリオダスが手を差し出してきた。

「案内するぜ」

 その言葉に、彼の手を取って立ち上がる。導かれるままに中庭を通り抜けて城の中に入る。静かな廊下を歩いていくと、食堂に辿り着いた。

「お前が開けろ」

 言われて、ドアの取っ手に手を掛ける。開くと、そこには七つの大罪メンバーを始め沢山の人々が居た。開いた扉に気付いたディアンヌが、アーサーを見て満面の笑みを浮かべる。

「じゃあ皆、せーの」

 元気なかけ声に続くように、大唱和が起こった。

 

『Happy Birthday Arthur!!』

 

2015/08/17

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