海を見る義善

「冨岡さんの瞳って、海の色ですね」

 善逸が、じっとこちらを見ていると思えば、唐突にそう言った。

 海色。自分ではあまり意識したことがないが、海色と言えばそうなのかもしれない。

「まあ、俺は海を見たこと無いんですけど」

 続いた言葉にほんの少し首を傾げる。見たことがないのに、どうして海色と分かるのだろう。そう言った善逸は、とても遠くを見るような目をしていた。

「海を見たいのか」

「……んー。まぁ、そのうち機会があれば」

 善逸の両手が伸びてきて、俺の頬を挟む。

「でも今は、ココにある海で満足してるんで、いいです」

 幸せそうに笑ってみせる善逸は、大層愛らしく、自然とこちらの口元も緩んだ。

 己の頬を包む善逸の手に、自らの手を重ねる。そして、真っ直ぐにその瞳を見つめて、愛おしさを込めて名を呼ぶ。

 それに、ほんの少し頬を染めて擽ったそうに笑う善逸を、心から大切にしたいと思った。

 

2019/09/08

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