「冨岡さんの瞳って、海の色ですね」
善逸が、じっとこちらを見ていると思えば、唐突にそう言った。
海色。自分ではあまり意識したことがないが、海色と言えばそうなのかもしれない。
「まあ、俺は海を見たこと無いんですけど」
続いた言葉にほんの少し首を傾げる。見たことがないのに、どうして海色と分かるのだろう。そう言った善逸は、とても遠くを見るような目をしていた。
「海を見たいのか」
「……んー。まぁ、そのうち機会があれば」
善逸の両手が伸びてきて、俺の頬を挟む。
「でも今は、ココにある海で満足してるんで、いいです」
幸せそうに笑ってみせる善逸は、大層愛らしく、自然とこちらの口元も緩んだ。
己の頬を包む善逸の手に、自らの手を重ねる。そして、真っ直ぐにその瞳を見つめて、愛おしさを込めて名を呼ぶ。
それに、ほんの少し頬を染めて擽ったそうに笑う善逸を、心から大切にしたいと思った。