「うーん。顔」
「かお」
酷く沈んだ気分だったので、普段なら口にしないようなことを口にした。「俺のどこが好きだ?」だなんて甘えきった言葉に返されたのは、端的な答えで、思わず繰り返してしまう。
「不満? じゃあ手」
そう言いながら、少し笑った善逸が俺の手を取る。指を絡めて軽く握り、離れる。
「首筋も」
そのまま彼の手が首筋を撫であげ、頬に触れる。
「んー、でもやっぱり顔」
指先が肌の上を滑り、優しく唇をなぞった。琥珀の瞳がじっと俺を見つめる。
甘やかされている。そう思ったから、俺は素直に甘えることにして、彼の唇に己のそれを重ねた。触れ合わせるだけの口付けの後、善逸がふにゃりと笑う。
「甘えた義勇さん〜」
その顔があまりに幸せそうだったから、俺も自然と幸せな気持ちになった。ほんの少しの時間で、何で気分が沈んでいたのかわからなくなってしまうのだから、彼には敵わない。
「……好きだ、善逸」
額を合わせて囁くと、善逸が両手で俺の頬を包んだ。
「俺も、義勇さんが好きだよ」
穏やかな声でそう言って唇を重ねてくる。そんな彼を柔らかく抱きしめながら、俺は目を細めて笑った。