付き合って熟年夫婦な義善

「うーん。顔」

「かお」

 酷く沈んだ気分だったので、普段なら口にしないようなことを口にした。「俺のどこが好きだ?」だなんて甘えきった言葉に返されたのは、端的な答えで、思わず繰り返してしまう。

「不満? じゃあ手」

 そう言いながら、少し笑った善逸が俺の手を取る。指を絡めて軽く握り、離れる。

「首筋も」

 そのまま彼の手が首筋を撫であげ、頬に触れる。

「んー、でもやっぱり顔」

 指先が肌の上を滑り、優しく唇をなぞった。琥珀の瞳がじっと俺を見つめる。

 甘やかされている。そう思ったから、俺は素直に甘えることにして、彼の唇に己のそれを重ねた。触れ合わせるだけの口付けの後、善逸がふにゃりと笑う。

「甘えた義勇さん〜」

 その顔があまりに幸せそうだったから、俺も自然と幸せな気持ちになった。ほんの少しの時間で、何で気分が沈んでいたのかわからなくなってしまうのだから、彼には敵わない。

「……好きだ、善逸」

 額を合わせて囁くと、善逸が両手で俺の頬を包んだ。

「俺も、義勇さんが好きだよ」

 穏やかな声でそう言って唇を重ねてくる。そんな彼を柔らかく抱きしめながら、俺は目を細めて笑った。

 

2020/02/16

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